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賃料未払い問題

【家賃を払ってくれない借主を追い出したい!】
 不動産のオーナーにとって、収益物件に借り手が入るかどうかは大きな関心事です。一方、無事に借り手が見つかったとしても、その人が何らかの事情で賃料の支払が滞ることもあります。
 賃料を払ってもらうことが期待できない場合、オーナーは借り手を追い出すことができるのか、解説していきます。

【賃貸借契約の法律関係】
 例えば、不動産オーナーである貸主(以下、「賃貸人」といいます)は、半年分の賃料を滞納している借主(以下、「賃借人」といいます)を追い出したいと考えています(以下、「本件事例」といいます)。
 このような場合、オーナーの請求は認められるでしょうか。

(1)賃貸人と賃借人は不動産の賃貸借契約(民法601条)により互いに債権債務を負う関係にあります。この場合、賃貸人は賃料を請求できる債権を有し、当該不動産を貸すという債務を負います。そして、賃借人は当該不動産を引き渡せ ・自分で使わせろということができる債権を有し、賃料を支払うという債務を負います。

(2)賃借人は半年分の賃料を滞納していることから、賃料を支払うという債務を怠っています。そのため、賃貸人は債務の不履行を理由に賃貸借契約を解除(民法541条)することで契約関係を解消することが考えられます。

(3)しかし、賃貸借契約は、売買契約のような1回限りの契約とは異なり、当事者の個人的信頼関係を基礎とする継続的な法律関係です。
 この場合に、契約書通りまたは他の契約と同じように解除を認めると賃借人にとっては生活の基盤を失うことになり、非常に大きなダメージを負うことになります。そのため、裁判例は、単に賃料不払いがあったというだけでは足りず、「賃借人の行為が賃貸人に対する背信的行為にあたる場合」でなければ解除は認められないと考えています。
(このような法律の考え方を、「信頼関係破壊の法理」といいます。言い換えれば、契約を継続することが賃貸人にとって余りに不公平といえるほど信頼関係が壊れている必要があるということです。)

(4)本件事例で賃貸人の主張が認められるかどうか(=賃借人を立ち退かせることができるかどうか)は、「単に賃料不払いがあったかどうか」ではなく、「賃借人の行為が賃貸人に対する背信的行為にあたる場合」にあたるかどうかが鍵となります。

【信頼関係破壊の法理についての代表的な裁判例】
(1) 賃貸借契約の解除が許されないとした裁判例 (最判昭和39・7・28)
 ア 家屋の賃貸借において、家賃を支払えと催告した期間内に延滞した家賃が支払われなかった場合でも、延滞した賃料の半分(4800円)は支払われている点、賃借人は過去18年間その家屋を借りて住んでおり、今まで今回を除いて家賃を延滞したことはない点、賃貸人が本来支払うべきはずの屋根の修繕費を立て替えているにもかかわらず今回まで賃貸人に償還を求めていない点等を考慮すると、家賃の不払いを理由とする賃貸借契約の解除は、信義則に反し許されないとした。

 イ したがって、賃借人の賃料不払いは「賃借人の行為が賃貸人に対する背信的行為にあたる場合」ではないとしている。

(2) 賃貸借契約の解除が許されるとした裁判例 (最判昭和49・4・26)
 ア 家屋の賃貸借において、賃借人の母の分も含めて約9年10ヶ月の長期間の間家賃を支払っていない点、賃借人が当該不動産は自己の所有であるとして賃貸人との賃貸借契約そのものの存在を否定している点等を考慮すると、賃貸借契約の解除が信義則に反するとはいえず、許されるとしている。

 イ したがって、賃借人の賃料不払いは「賃借人の行為が賃貸人に対する背信的行為にあたる場合」であるとしている。

(3) 上記の裁判例は、いずれも極端な例ではありますが、裁判例(1)のように、単に賃料の(一部)不払があっただけでは、解除は簡単に認められないということがわかると思います。

  現在の実務の相場としては、概ね3か月以上の賃料滞納があれば、立退きの請求が認められる可能性が高いといわれていますので、一つの基準として覚えておくと良いでしょう。

【本件事例の結論】
 本件事例は、賃借人が半年分の賃料を滞納しているという事案ですので、他の事情にもよりますが、「賃借人の行為が賃貸人に対する背信的行為にあたる場合」にあたり解除できると考えられます。突発的に賃借人が賃料の一部を支払う等の事情があればまた難しいのですが、一般的に考えて半年間も賃料を滞納していれば今後も賃料を支払うことはないと考えるのが通常であり、賃貸借人間の信頼関係はすでにないと考えることができ、本件事例の賃貸人は賃借人を立ち退かせることが可能と考えられます。

【立退きについて困った場合は相談を】
 ここでは、賃料の不払を続ける賃借人に対して、賃貸人が立退請求をするにあたり請求が認められるかという点について解説いたしました。
 もっとも、立退きについては、事業用か一般の賃貸借か、不払いの態様がどのようなものか、どのような方法によって立退きをさせるかというところで、ケースバイケースにならざるを得ない点も多くあります。安易にオーナーが直接賃借人に接触し、別のトラブルが発生する可能性も考えられます。

 お困りの際は、不動産問題に強い弁護士に相談する等、専門家を頼るべきといえるでしょう。

【監修:弁護士法人 山村法律事務所】

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