民法では、「相続人の不存在」という章があります。
子どもや配偶者がおらず父母や祖父母は他界しており、きょうだいもいないような場合、
または戸籍上の相続人はいるけれど全員が相続放棄したような場合に、相続人のあることが明らかでないとき、「相続人の不存在」として、民法上特別な処理が行われます。
このときに登場するのが、「相続財産の清算人」です。
債権者や受遺者への支払い、特別縁故者に対する相続財産を分与するための手続きなど、被相続人の遺産の管理をする人です。
相続財産の清算人は、利害関係人又は検察官の請求によって選任されます。
利害関係人とは、相続財産の管理や清算がなされることについて法律上利害関係を有する人のことです。
たとえば、貸したお金を回収したい債権者、担保権を実行したい抵当権者、マンションの管理組合、所有者の分からない空き家を処分したい自治体、などなど。
このような利害関係人が家庭裁判所に申し立てることによって選任されます。
なお、相続財産の清算人選任申立は、一般的には70~100万円ほどの予納金が必要となることが多く、これは選任の申立をする人が負担します。
相続財産の清算人になるために必要な資格はありませんが、通常、弁護士や司法書士がなることが多いです。
相続財産の清算人は選任されると、相続財産を競売にかけるなどして、相続財産の債権者に弁済を行います。このほか、特別縁故者への財産分与、共有持分の共有者への帰属などの手続きを行います。
これらの手続きがすべて終わると、残った財産は民法により、国庫に帰属されます。
ここまでの仕事を終えると、相続財産の清算人の仕事は終了します。
このほか、相続財産の清算人が選任された後に相続人がいることが判明した場合にも、相続財産の清算人の仕事は終了します。
たとえば、突然遺言書が見つかって包括遺贈や認知がされていたような場合です。この場合は、その相続人に相続財産の管理が引き継がれるため、相続財産の清算人の仕事は終わります。
【弁護士の一言】
相続財産清算人の業務を受ける場合に、よくご質問を受けるのが、「予納金」の金額です。
本稿では、「70~100万円程度」と記載しましたが、あくまで目安であり、より単純な業務であれば、50万円前後のこともありますし、業務が複雑であれば、この金額よりも高額になることも多々あります。
この予納金は、「相続財産清算人」という裁判所から選任されて業務を行う弁護士の費用ですので、その業務の負荷によって上下するのですね。
また、債務を支払って相続財産が残っていれば、そこから相続財産清算人の報酬が充当され、予納金が返金されることもありますが、
あくまで「可能性がある」としかいえず、それらを含めて、不確定要素があるなか相続財産清算人を申し立てるかどうか検討せねばなりません。
【監修:代表弁護士 山村 暢彦】