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不動産の火災保険料などは、「損害」として認められるのか?

物件の瑕疵が見つかった。
損害賠償請求を検討する場合、火災保険料も請求できる?

もし、自分が住んでいる瑕疵が発覚して、契約に関する違反が認められた場合には、不動産業者側に損害賠償請求を検討することになります。
損害賠償請求が認められたとき、契約していた火災保険料などの費用は損害として認められるのでしょうか。

肯定されるケースと、否定されるケースがある
不動産における損害賠償請求において火災保険料は、損害として認められるケースとそうでないケースがあります。

実際のところは事件の内容など全体を総合的に判断して決められるため、請求の可否は弁護士に相談するのが一番の近道です。
それでは、これまでの判例を元に具体例をご紹介します。

火災保険料を損害賠償請求で肯定した例
神戸地尼崎支判 平成25年10月28日の判例
これはマンションを借りた借主に対して、火災保険料が損害賠償請求として認められた判例です。
借主はマンションを賃貸する際に、貸主側から室内で自死したことを告げられず、契約しました。このような心理的瑕疵については、告知義務の明確なルールはありません。具体的なルールが存在しないため貸主側の判断に委ねられることになります。しかし、このケースでは、貸主の信義則上告知すべき義務があると判断されて、火災保険料を含めての損害賠償請求を認めました。

東京高判 平成6年7月18日の判例
土地、一戸建て建物の売買が行われましたが、新聞広告において建ぺい率・容積率が誤った内容で記載されていたというケースです。
建築可能な建物の大きさは、土地の面積と建ぺい率・容積率によって決まります。これらの情報が間違っていると、住宅を建てる際に不測の制限を受ける恐れがあります。
この事例では、契約締結時においても、仲介業者から買主に対して誤った説明がされていました。そのため買主の錯誤無効の主張が認められ、買主の売主に対する火災保険料の返還請求が認められました。

火災保険料を損害賠償請求で否定した例
このケースでは損害賠償責任が認められなかったため、火災保険料の請求も否定されています。

横浜地判平成10年2月25日の判例
建物の借主が化学物質過敏症になり、健康被害が生じました。このため貸主側に対して、建物にこの症状の原因となった材料を使ったことは、債務不履行にあたると主張して損害賠償請求を行ったのです。しかし、この例では貸主側に借主の健康被害を予測して、対応することは非常に難しいとされたため、損害賠償請求が認められませんでした。

つまり、損害賠償請求そのものが認められない場合は、火災保険料の請求も難しいということになります。

【監修:弁護士 山村 暢彦】

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