相続の時に何かとトラブルになるのが、不動産です。現金と不動産が残っているケースで不動産を相続した人は、不動産の価格分、差し引かれた現金を相続するか、相続財産の金額を調整するために代償金を支払わなければならないことがあります。
このようなケースで、不動産の評価額はどのように決まるのでしょうか?
不動産の価値は一物四価と言われている
不動産は一物四価と言われています。これは、一つの「物=不動産」には四つの評価方法があるという意味です。不動産の評価は路線価、公示価格、実勢価格、固定資産税評価額に分かれています。
路線価とは
路線価とは、相続税の課税額を計算するときに用いられる評価方法です。不動産の道路に面した標準的な宅地1平方メートルあたりの土地の評価額で、国税庁が毎年8月ごろに発表しています。
路線価はあくまで相続税等の算出で使用される数値です。そのため、実際の市場で取引される不動産価格とは乖離しているケースも少なくありません。
公示価格とは
公示価格とは、地価公示法という法律によって、国土交通省に所属の、土地鑑定委員会によって専任された「不動産鑑定士」という不動産の評価のプロが調査を行います。そして不動産鑑定士の調査結果に基づき、毎年1月1日の価格が決まり、3月に公表しています。
固定資産税評価額とは
固定資産税や不動産取得税、登録免許税など不動産関連の税金の計算の基礎となります。3年に一回価格更新されます。
おおよそ地価公示価格の7割と言われています。固定資産税は固定資産税評価証明書で確認することができます。固定資産のある役場の納税課で身分証を提示し、手数料を納付して発行してもらうことができます。
実勢価格とは
実勢価格とは実際の不動産取引の時の売買金額のことです。不動産の取引価格は、売主は「高く売りたい」、買主は「安く買いたい」という取引当事者の意思が介在するため、価格が一定ではありません。
相続や売買の時はどのように価格を判断するの?
法律で「相続時の不動産評価額は○○で評価する」という決まりはありません。実務上では土地は相続税評価額、建物は固定資産税評価額で評価することもあります。但し、親から相続する不動産に賃貸物件等の収益不動産が含まれている場合は、このように単純には決まらないケースも多いです。
不動産は相続財産の中でも、高額で一つとして同一のものはなく、物件ごとの個性が重要視されます。そのため遺産分割の際に不動産の評価で争いになるケースもあるのが実情です。
【弁護士の一言】
不動産の評価額が、相続トラブルの争点の一つになるというのはよくあるケースです。裁判所では、基本的に「実勢価格」で判断しますが、この実勢価格を決めるのが一筋縄ではいきません。最終的には、「裁判所による鑑定評価」による決まるとしか説明できないぐらいです。
簡易的には、「路線価÷0.8」「固定資産税÷0.7」でも実勢価格の目安を知ることはできますが、不動産ごとに特徴もあり、機械的に算出できるわけでもないのです。結局、相続トラブルには「不動産の知識・ノウハウ」も必須になってくることが多いです。
【監修:代表弁護士 山村 暢彦】