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【弁護士が解説】遺言書の検認とは? 手続きの流れ・注意点・よくある疑問

はじめに

「遺言書を見つけたけど、どうすればいい?」
「検認って聞いたことあるけど、何をするの?」
相続手続きの初期段階で登場するのが「遺言書の検認」です。これは遺言書を有効に活用するための、家庭裁判所による形式確認の手続きです。今回は、検認の基本から、実際の流れ、注意点、よくある質問まで、横浜の弁護士がやさしく解説します。

遺言書の検認とは?

遺言書の検認とは、相続人や第三者による偽造・変造を防止するために、遺言書の形状・日付・署名・内容の存在を家庭裁判所が確認する手続きです。
検認はあくまで「形式」の確認であり、「内容の有効性(例:遺言能力や強迫の有無)」を審査するものではありません

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検認が必要な遺言書と不要な遺言書

遺言書の種類検認の必要性
自筆証書遺言必要
秘密証書遺言必要
公正証書遺言不要
法務局保管の自筆証書遺言不要
遺言書の種類

 ※2020年の法改正により、法務局で保管された自筆証書遺言は検認不要となりました(遺言書保管法)。

検認の流れ

1.申立て

管轄の家庭裁判所(被相続人の最終住所地)に申立てます。
申立人は、遺言書を保管・発見した方が多いです。

2.必要書類

・検認申立書
・被相続人の出生から死亡までの戸籍一式
・相続人全員の戸籍
・遺言書の原本
・収入印紙+切手(裁判所ごとに異なる)

3.裁判所から通知

相続人全員に通知されます。検認期日に出席しないことも可能ですが、内容確認の機会です。

4.検認の実施

裁判官立会いのもと、遺言書の開封・内容確認を行い、「検認調書」が作成されます。

5.検認済証明書の取得

登記・金融機関手続に必要です。別途申請が必要です。

Q&A|よくあるご質問

Q1:検認されたら、遺言の内容は確定するのですか?

A:いいえ。

検認は「形式確認」であり、内容の有効性(例:遺言能力があったか、脅されていなかったか)を判断しません。内容に問題があれば、後に「遺言無効確認の訴訟」を起こすことも可能です。

Q2:開封してしまったらどうなる?

A:過料(5万円以下)の対象となることがあります。

封印がある遺言書を検認前に勝手に開けるのは、法律で禁止されています(民法第1005条)

Q3:検認を受けた後、遺言に従ってすぐ遺言の内容通りに相続財産を分配できますか?

A:基本的には可能ですが、他の相続人との確認が重要です。

遺言の内容が不明確な場合や、他の相続人と争いがある場合は、速やかに弁護士に相談しましょう。

Q4:法務局に預けていない自筆証書遺言でも有効?

A:法務局に預けていなくても有効です。

ただし、検認手続が必要となります。法務局預けによる制度は「検認不要」という点で実務上の利便性が高いというだけです。

Q5:相続人でない者が検認の申立てはできますか?

A:基本的にはできません。

検認申立てができるのは、相続人や利害関係人(受遺者、遺言執行者など)に限られます。

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検認手続きにおける弁護士の役割とは?

遺言書の検認は、一見すると「形式確認」の手続きに過ぎないように思えますが、実務上は相続トラブルの火種が生まれやすい場面でもあります。ここで弁護士が果たす役割は多岐にわたります。

①申立手続きの代理

家庭裁判所への検認申立ては、必要書類の取り寄せや書式の作成など、煩雑な作業が伴います。
弁護士が代理人となることで、申立人の負担を大幅に軽減できます。
 ・戸籍の収集や相続関係の調査
 ・相続関係説明図の作成
 ・必要書類のチェックと収集
 ・家庭裁判所への申立書作成・提出

特に、相続人の人数が多い、代襲相続が絡むなど、相続関係が複雑な場合には、専門家による整理が非常に有効です。

②相続人間の調整・連絡

検認の通知は全相続人に対して送られるため、「そんな遺言書は知らなかった」「無効ではないか」といった感情的なトラブルが起きやすいタイミングです。
弁護士が介入することで、
 ・他の相続人との調整・連絡を代行
 ・不必要な対立の回避
 ・紛争の芽を早期に把握し、対応方針を策定
といった冷静で客観的な対応が可能になります。

③遺言書の有効性の事前確認

検認では形式しか確認されませんが、弁護士が関与することで、
 ・遺言書の法的要件(署名・日付・押印など)の事前チェック
 ・遺言能力があったかどうか、医学的・法律的観点からの検討
 ・筆跡鑑定の必要性の有無
といった、のちのトラブルを回避する視点でのアドバイスが得られます。

④遺言の内容に異議が出た場合の法的対応

仮に検認後に、「この遺言書は無効ではないか」といった異議が出た場合、弁護士であれば、
 ・遺言無効確認訴訟の提起
 ・証拠収集と主張整理
 ・裁判所での代理対応
まで、スムーズに移行・対応することができます。

⑤不動産登記・預金解約など実務対応のフォロー

検認済証明書を取得しても、それだけでは相続手続きが完了するわけではありません。
 ・不動産の相続登記(司法書士と連携)
 ・預貯金の解約・名義変更(金融機関対応)
 ・株式・証券の相続手続き
など、検認後の一連の相続実務を弁護士が総合的に支援することで、遺産分割協議や税務申告への橋渡しがスムーズに行えます。

検認で弁護士に依頼すべきケースとは?

特に以下のようなケースでは、早期の弁護士関与をおすすめします。

ケース弁護士依頼の必要性
相続人間に対立がある中立的な第三者が必要
遺言内容に不公平感がある異議申立ての可能性に備える
被相続人の認知症歴がある遺言能力の争点化が懸念される
相続関係が複雑戸籍収集と法的整理が困難
不動産・非上場株式が含まれる専門的手続とアドバイスが不可欠
弁護士に依頼するべきケース
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相続弁護士にご相談ください

検認は「ただの形式確認」と侮っていると、思わぬ紛争に発展することもあります。
当事務所では、検認手続きの段階から、相続全体の見通しをもってトータルでサポートいたします。

まとめ

遺言書の検認は、偽造・変造を防ぐための形式確認手続です。検認前の開封には法的リスクがあります。
弁護士に依頼することで、トラブル回避とスムーズな手続きが期待できます。

【弁護士の一言】

 検認手続自体はそれほど難しくないのですが、裁判所の手続であり、各相続人と顔を合わせる機会になります。そのため、遺言書の内容や遺産分割の内容においてトラブルが予想される場合、検認手続きから、一気に紛争が過熱するケースがあります。
 弁護士に依頼する場合には、検認手続が難しいから依頼するというよりも、検認手続を境に相続トラブルが発生する可能性があるため、検認手続から依頼する、という意味合いが強いと思います。実際、検認だけをご依頼を受けるのは、お身体が悪く代わりにやって欲しいというご依頼ぐらいで、ほとんどのケースでは紛争が予想され、検認から弁護士が窓口になるようなケースが多いです。

 基本的に、公正証書では検認不要、自筆証書遺言では検認が必要ですが、自筆証書遺言の場合でも「法務局保管」制度を利用すれば検認不要になりましたので、この点覚えておくとよいと思います。

【文責:弁護士 山村 暢彦】

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