遺言書には、3つの類型があります。
・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言
このうち、本人が作成し、本人が保管していることが多いものが「自筆証書遺言」です。
自筆証書遺言を弁護士や司法書士に預け、保管を任せている場合は、死亡が判明した時点で通知されるため、遺言書の存在が明らかになります。
しかしそうではない場合、たとえば被相続人が亡くなって自宅の金庫を見たところ、遺言書を発見した、という場合があるかもしれません。
では、このように自筆証書遺言を自宅で発見した場合は、どうしたらよいのか。すぐに開封して中身を確認してもよいものか?
これについて以下に見ていきます。
遺言書の開封の手続き ~「検認」について~
たとえば妻が、亡くなった夫の遺言書を自宅で発見した場合でも、封印のある場合はその場で開封してはいけません。
封印のある遺言書は、必ず家庭裁判所で開封の手続きを経る必要があります。
このような開封の手続きを、「検認」といいます。
家庭裁判所への提出を怠り、勝手に開封してしまうと、なんと過料に処せられます!(民法1005条)。発見しても開封しないように注意しましょう。
なお、検認の手続きは、相続人に対し遺言書の存在を知らせ、遺言書の形式や態様を調査し、偽造を防止し、保存を確実にするためにする、検証、証拠保全のための手続きです。
遺言書の有効や無効を判断する手続きではありません。
検認の手続きの流れについて
検認の手続は,遺言書を発見した相続人などから裁判所に申立てられることにより始まります。
検認の申立てがあると、裁判所から相続人に検認を行う日(検認期日)の通知がされます。
検認期日には、申立人が遺言書を提出し、出席した相続人等の立会のもと、裁判官が遺言書を開封し、遺言書を検認します。
(封印のある遺言書は法律上、家庭裁判所で相続人等の立会いの上で開封しなければならないことになっています)。
検認が終了すると、遺言の執行をするために裁判所が検認調書を作成します。
これで、検認手続きは終了します。
なお、前述のように検認の手続きは、遺言書の有効や無効を判断する手続きではありません。
「この遺言は無効ではないか…?」など、遺言の有効性を争いたい場合は、また別の裁判所の手続き(遺言無効確認訴訟)がありますので、そちらで主張をしていくことになります。
【弁護士の一言】
自筆証書遺言では検認手続きが原則必要となりますが、自筆証書遺言を法務局に保管してもらうという制度を利用すれば検認手続きが不要になります。
自筆証書遺言は、内容が不明確であり揉めるというケースとともに、そもそも発見されない、又は隠したり捨てられたりしてしまう、というトラブルもあり得ます。
そのため、コストはかかりますが、基本的には公正証書遺言のほうが安定すると思いますし、法務局の保管制度を利用することで、「発見されない」「隠匿される」という事態を防ぐことができます。
【監修:代表弁護士 山村 暢彦】