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裁判例ノック26~30本 原状回復

弁護士 寺田による裁判例ノックですっ。
皆様に役立つ、過去の裁判例をご紹介していきますっ。

裁判例ノック26本目 原状回復

川口簡裁H19.5.29
【概要】
賃借人の手入れに問題があったとしても、経過年数を考慮すると賃借人の負担すべき原状回復費はないと判断した事例。
十分に償却して価値はないと判断されたものと考えらえれます。

【結論】
18年以上の賃貸で一度も内装修理がなされておらず、喫煙が認められるとしても時間の経過に伴う自然な損耗といえる。また、賃借人の手入れの問題からカビが発生したが、経過年数を考慮すると賃借人が負担すべき原状回復費用はない。更新料支払は、無効であるとはいえない、とそれぞれ判断。

長年の賃貸借により内装等の償却は完了しており、賃借人に負担させないという判断かと考えられます。価値残存を割り出す考えとも馴染みます。
いつから負担がないかのボーダーはともかく、全体的に想定ができる裁判例ではありますね。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック27本目 原状回復

京都地裁H19.6.1
【概要】
通常損耗を賃借人負担とする・解約費用を賃借人負担とする内容の特約が消費者契約法上無効となった事例。
賃料数か月分の保証金を総取りすると、印象が悪くなる傾向が見られます。

【結論】
解約手数料の趣旨が、空室補填に対する違約金条項と解釈したうえで、解約申し入れから45日継続することを指摘し、損害がないとして解約費用特約を無効とした。原状回復特約は、消費者契約法の適用があることを指摘し、賃借人の一方的な不利益になるため無効とし、清掃費を賃貸人負担とした。

裁判例は丁寧な解釈論を展開しており、金額による判断とは言いにくいです。
とはいえ、賃料と保証金とのバランスや、そこからいくら差し引くか、その費目は…、といった内容にも、着目する必要があるといえるでしょう。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック28本目 原状回復

奈良地裁H19.11.9
【概要】
敷引特約が消費者契約法に反し無効とされた事例です。
とはいえ中身を見ると、賃貸人やり過ぎパターンの一例です。この裁判例をもって、個人相手の敷引特約一般がすべて無効かは微妙ですが、厳しめに見ておく必要はあるでしょう。

【結論】
賃貸借契約において、債務不履行を除き、賃借人が賃料以外の金銭を負担することは予定されておらず、地域で事実たる慣習として成立している証拠もない。自然損耗について必要費を賃料で回収し、敷引特約で回収することは賃借人に二重の負担を強いるもので、消費者の権利を一方的に害すると判断。

この裁判例をもって、個人相手の敷引特約すべて無効とも判断しかねますが、かなり制限を受ける根拠となることも間違いなさそうです。
どちらにしても、自然損耗分は賃料で負担しているというのが裁判所の基本的発想かと思われます。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック29本目 原状回復

京都簡裁H20.8.27
【概要】
裁判例ノック28本目の類似事件です。
保証金解約引特約が消費者契約法10条に反し無効とされたものです。内容も、賃貸人やり過ぎパターンではありますが、多少名前を変えた程度では、なかなか認められませんね。

【結論】
個人が所有不動産を継続して賃貸することは「事業」にあたり、消費者契約法の適用がある。保証金解約引特約は、債務不履行がなくとも8割が返還されないもので、信義則に反するとともにそのような慣習の存在も認められない。そのため、自然損耗以外のものを差し引いて残りの返還を認めた。

個人の不動産オーナーであっても、消費者契約法の適用は免れません。また、敷金と保証金とで名目を変えたとて、実質から判断されると厳しいです。
賃料と敷金のバランスや、敷引きの割合等、考慮すべき部分が多いのは悩ましいところです…。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック30本目 原状回復

東京地裁H21.1.16
【概要】
通常損耗補修合意について、合意がなされたとはいえず、仮に合意があったとしても消費者契約法10条に反し違法とされた事例。
8カ月間の賃貸借という特殊性はあるのですが、かなり賃貸人に厳しい先例性を持つ裁判例です。

【結論】
裁判例ノック24本目の最高裁判決を引用。
明確に賃借人負担と定めた特約と解することはできず、賃借人が真に合意したとみられる事情はない。特に、8カ月の居住で、礼金を2カ月差し入れているのに敷金全額を失う合理的理由はない。仮に特約が有効であっても、消費者契約法に反したものと判断。

最高裁判例を引用し、事案に落とし込んだうえでの判決で、丁寧に否定されている頭の痛い判決と言えます。
8カ月の居住で、敷金礼金各2か月分(計80万円)全額支払いなので、やり過ぎの気もあるとはいえますが…。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

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