家賃交渉で賃料値上げは、難しい?
家賃の値上げ交渉は、当事者間でトラブルになることもあります。賃借人がすんなり値上げを認めてくれれば良いのですが、簡単には認めてもらえないのが実情です。
一部の例外を除いて、相手との合意に至らなければ、家賃を値上げしてもらうことはできません。賃借人との話し合いがまとまらない場合は、民事調停や裁判にまで発展するケースもあるようです。
賃料増額の民事調停とは?
民事調停とは訴訟の前段階の手続きになります。これは裁判官と調停員を交えて、協議の元争いの当事者同士で協議を重ねて、合意を目指す方法です。調停員のような第三者を交えて話し合いを行うことで、当事者だけではまとまらない話し合いが合意に至ることが期待できます。
しかし、賃貸人も賃借人も自分の意見を譲らない場合は、最終的に訴訟で解決を図ることになります。
賃料増額訴訟の提起
賃料増額請求が訴訟にまで発展するケースは少ないのですが、もし訴訟に臨む場合は以下の要件を満たす必要があります。
①現状の賃料額が不相当であることを立証すること
②これまでの賃料が不相当になった背景に「事情」の変更が存在すること
①については、不動産鑑定士に依頼して適正賃料の評価をしてもらうことになります。②については、弁護士から聴取を受けて、主張内容を明確にしていきます。
値上げによって契約を解除されるリスクは?
家賃の値上げを推し進めることで、賃借人との関係悪化が予測されます。この場合、賃借人側から更新拒絶や、賃貸契約の解約を申し入れされるリスクも考えておく必要があるでしょう。また、賃料増額訴訟を行う場合、費用について採算がとれないことも想定しておく必要があります。家賃が安い物件であれば、時間とお金をかけることで、かえって損をしてしまう可能性もあります。
訴訟に踏み切る前にはこの点について、十分検討をしておく必要があると言えます。
家賃の値上げを認めてもらう対応策は?
賃貸借契約書に固定資産税の上昇率に連動して自動増額する旨を記載することで、ある程度対策を取ることが可能です。ただし、借主が家賃の値上げを断固拒否する場合は、最終的には、法的な手続きに移行することになるでしょう。
【弁護士の一言】
賃貸人側からの賃料増額請求は、立証の観点・必要コストの観点から、法的に難しいのが実情です。取れる方策としては、記事でもご説明したように、固定資産税等、客観的な数値に連動して賃料増額できるような契約にしておくとか、賃借人に合意してもらえそうな「微増した」金額で交渉する、などでしょうか。賃借人側としては、微増レベルであれば、調停などに巻き込まれるのも面倒なので、多少であれば譲歩するということもありうるかと思います。
ただし、基本的には賃料額は一度契約した以上、法定更新という制度があり、簡単に上昇できないというのは、肝に銘じるべきかと思います。
【監修:代表弁護士 山村 暢彦】