賃貸アパートやマンションを経営していると多くのリスクが生じます。一般的に例として挙げられるのが、家賃の未払いや災害等のリスクです。
数ある経営上のリスクの中でも、昨今テレビなどで取り上げられて話題となっている「ゴミ屋敷」について、今回はご紹介します。
賃貸マンションがゴミ屋敷となるトラブル
オーナーにしてみれば自分が貸している物件がゴミ屋敷になったら、途方にくれてしまうのではないでしょうか。一度ゴミ屋敷化してしまえば、それを解決するには時間がかかります。
いくらゴミといえども相手の所有物であることから、勝手に処分することもできません。また、このようなケースは住人に催告を重ねても、スムーズな対応をとってもらうのは難しいことが多く、問題が長期化することは珍しくないようです。
なぜゴミ屋敷になる?
なぜ、ゴミ屋敷になってしまうのでしょうか? ゴミをため込んでしまうというのは、通常の衛生概念があれば、考えにくいことです。しかし、ゴミを捨てられない人は整理が苦手であったり、ゴミを収集する癖があったりすることが多いようです。
また、お年寄りの方の中には、物を捨てること自体を「勿体ない」と感じてしまい、物が捨てられず、ため込んでしまうというケースも少なくないようです。
つまり、住人の性格的な問題から、物件問題に発展すると考えられます。
近年ではゴミ屋敷問題が深刻化して、東京都足立区や埼玉県での一部の自治体ではゴミ屋敷対策の条例まで制定されています。
参考
東京都足立区:「足立区生活環境の保全に関する条例」
埼玉県八潮市:「八潮市まちの景観と空家等の対策の推進に関する条例」
住人の家財を勝手に処分しても、大丈夫?
ゴミなんだから、勝手に捨ててもいいのでは?
確かにこのように考えれば、容易に解決できるかもしれません。しかし、ゴミといえども、賃借人にしてみれば、立派な自分の所有物です。
敷地内にあるものは、ゴミであろうと、所有権を主張されれば私的財産として取り扱われるため、勝手に処分はできないのです。
ゴミ屋敷の住人を、強制退去できる?
このような入居者をすぐに強制退去させることは、現実的に非常に難しいのが現状です。賃借人側は法的には保護されており、「信頼関係の破壊」がなければ、契約の解除も簡単にはできません。
この場合の対応は、任意で話し合いを重ねて、明け渡しを促すか方法が一つ。もう一つは法的措置として明け渡し訴訟を提起して、判決を得ることで強制執行することが考えられます。
しかし、解決には半年から一年など、時間がかかることを意識しておく必要があります。ゴミ屋敷問題は普段の物件管理を徹底して、問題が深刻化する前に、対応策を考える必要があるでしょう。
【弁護士の一言】
ゴミ屋敷問題は、①入居者がゴミ屋敷化させ、異臭等や近隣と問題になるケースと、②退去ないし孤独死などで、ゴミ屋敷のまま居住者がいなくなるケースの、2つに分けて考える必要があるかと思います。
①の入居中のゴミ屋敷は、かなり対処が難しいです。臭いや景観のみの問題ですと、賃料不払いがなければ、立退きは基本的に難しいです。②の場合も、「入居者の所有権がある残置物」ですので、煩雑な手続きが必要となります。
任意の退去でしたら、処分費用を大家側で負担してでも、入居者に手続をとってもらい解決するのが、早いです。他方、入居者と連絡が取れないケースですと、弁護士に相談のうえ、対処せざるを得ないかなと考えます。
【監修:代表弁護士 山村暢彦】