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裁判例ノック16~20本目 原状回復

弊所 弁護士・寺田の裁判例ノックですっ‼
皆さまに役立つ過去の裁判例を、ご紹介していきますっ‼

裁判例ノック16本目 原状回復

神戸地裁H14.6.14
【概要】
 敷引特約と修繕費用とが同時に争われた裁判です。
敷金が賃料10か月分、敷引特約が賃料4か月分となっていたが、敷引特約については有効と認められ、修繕費用は通常損耗を除く部分を賃借人負担とされました。

【結論】
 本件敷引約定の有効性につき、礼金や賃料の先払い、更新料、修繕費用や空室損料等様々な性質を有するものにつき、あらかじめ合意したものであるため、著しく高額で暴利行為にあたる等の事情がない限り有効としました。
修繕費用は、賃借人の通常損耗ではない部分についてのみに認められました。

 敷引特約の有効性について認められ、修繕費用等の考慮も認められるのであれば、修繕費用を敷引金として構成することはオーナーの戦略として一つ取りうるものと言えそうですね。
とはいえ、個人用住宅賃貸だと敷金の額的に…等の、悩みもありそうです。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック17本目 原状回復

東京簡裁H14.7.9
【概要】
 経過年数を考慮したうえで、賃借人の負担割合を示した裁判例です。
様々な経過年数から、かなり細かい事実認定がされています。

【結論】
 壁ボードは賃借人負担。壁クロスは壁ボードの穴に起因し賃借人負担だが、入居2年の経過で残存価値は60%のみ負担。
換気扇の焼け焦げは賃借人の不相当な使用に起因するため賃借人負担だが、設置後12年経過し残存価値は10%であるため、その分を賃借人が負担すると判断。

 賃借人の通常損耗以外の負担を認めながら、その経過年数による残存価値分のみ負担させることで、更に賃貸人の負担が重くなる結果となっています。
今までの裁判例からすれば、経年劣化を賃借人負担とするのはやはり厳しいので、家賃等でのリスクマネジメントは欠かせません。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック18本目 原状回復

H14.9.27
【概要】
 ペット可物件において、ペット飼育に起因するクリーニング費用は賃借人負担とする旨の特約が有効とされたもの。
ほとんどゲージ内での飼育であっても、賃借人負担とするとの判断がなされたものです。

【結論】
 ①は賃借人にとって過大な負担で借地借家法の趣旨から無効、②は通常損耗についてまで賃借人負担とするものではないとした。③は、匂いや衛生等の問題があり賃借人負担とすることは合理的とし、クリーニング費用はペット消毒の代替であるとして、賃貸人の主張を認めた。

 ペット飼育をするのであれば敷金を追加するといった形態もよく見られるように、ペットは賃借人に追加の負担を負わせることはかなり前提として定着している感があります。
賃貸人からみれば、実際に飼育するかはわからないところもあるので、保険をかけておきたいですね。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック19本目 原状回復

名古屋簡裁H14.12.17
【概要】
 特約として、保証金(敷金)の50%償却と、すべて原状に復して返還するという条項があった場合についての裁判例。
ふたつの特約の内容を総合的に考慮した判断がなされています。

【結論】
 特約のない場合は、通常損耗は賃貸人負担とすべきだが、特約にて賃借人負担とすることもできると前提を述べ、本件特約は、50%償却等の事情も鑑みると、賃借人の負担を一般的なもの以上に定めた特約とは見られないと判断した。通常損耗につき、賃借人負担の明確な合意もないと判断。

 リスクマネジメントのバランスという側面がやはり出た裁判例であるように思います。
敷金の50%償却条項を賃借人が合意しており、その分を受け入れたのであれば、それ以外の負担を負わせるハードルはかなり高く、明確に合意したことが求められる判断といえます。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック20本目 原状回復

東大阪簡裁H15.1.14
【概要】
 子供の落書き等の過失があった賃借人において、負担額はそれらのうち、経年劣化によるものを除いた部分と判断した裁判例。
今までの中でもかなり賃借人寄りのものといえます。

【結論】
 賃貸人が請求する部分は、争いのない部分を除けば経年劣化や通常使用によって生じるものであり、請求に理由がないとした。
そのため、賃借人の主張する、負担部分は子供の落書きによるクロスの一部のみでそのクロスの面積に経年劣化による残存価額を乗じた部分のみの負担を採用した。

 落書きされたクロス部分に残存価額を乗じたものなので、負担額はかなり少ないものとなります。57カ月間住んだため、残存価値も残り少なかったといえます。
これらを防ぐための家賃設定や更新料等の保険を掛けることが重要ですね

【文責:弁護士 寺田 健郎】

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