1. 相続手続きをスムーズに進めるために弁護士が必要な理由
相続手続きは、単に財産を分けるだけでなく、戸籍の収集、財産調査、遺産分割協議、銀行口座の解約、相続税の申告など、法律と実務が絡む複雑な手続きを伴います。特に、相続人が複数いる場合や、遺言書がない場合は、トラブルに発展しやすく、慎重な対応が求められます。
また、相続手続きでは被相続人の戸籍謄本や住民票の除票の取得が不可欠ですが、被相続人が遠方に本籍を置いていた場合、これまでの取得手続きは非常に手間がかかりました。
しかし、「広域交付制度」を活用すれば、全国どこでも最新の戸籍証明書や住民票を取得できるため、相続手続きをスムーズに進めることが可能になります。本記事では、広域交付制度の手続き内容とともに、弁護士に相続手続きを依頼するメリットを具体的に解説します。
2.広域交付制度の手続きと活用方法
広域交付制度とは?
広域交付制度とは、住民票の登録地や本籍地以外の市区町村役場でも、住民票や戸籍証明書を取得できる制度です。
2024年3月から始まった「戸籍の広域交付制度」により、全国の市区町村役場で戸籍謄本を取得できるようになりました。
広域交付制度で取得できる書類
証明書の種類 | 取得可能か? | 用途 |
戸籍謄本(全部事項証明書) | 取得可能 | 相続人の確定、遺産分割協議 |
戸籍抄本(個人事項証明書) | 取得可能 | 必要な相続人の戸籍情報取得 |
住民票の写し | 取得可能 | 相続人の現住所証明 |
住民票の除票 | 取得可能 | 被相続人の最終住所確認 |
⚠ 取得できないもの
- 除籍謄本・改製原戸籍(過去の戸籍情報)は、本籍地の役所でのみ取得可能
- 戸籍の附票(住所の履歴)は広域交付の対象外
広域交付制度の利用方法
1. 申請窓口
全国の市区町村役場で申請可能(ただし、郵送・オンライン申請は不可)。
2. 必要書類
本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
取得したい戸籍の情報(本籍地、筆頭者名)
3. 手数料
各自治体ごとに異なるが、通常300~500円程度/1通

3.弁護士に依頼する5つのメリット
① 広域交付制度を活用し、戸籍収集の負担を軽減
相続手続きでは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を揃える必要があります。
広域交付制度を利用すれば、最新の戸籍謄本は全国の役所で取得可能ですが、過去の戸籍(除籍謄本・改製原戸籍)は本籍地でのみ発行されます。
弁護士に依頼すれば:
- 広域交付制度で取得できる書類と、取得できない書類を整理し、必要なものを確実に取得
- 除籍謄本・改製原戸籍の取得を代行し、相続人の確定をスムーズに
- 相続人に漏れがないか確認し、トラブルを未然に防ぐ
➡ 「何をどこで取得すればいいのか?」という判断が難しい部分を弁護士がサポートすることで、時間と手間を削減できます。
② 相続人間のトラブルを防ぎ、円満な遺産分割をサポート
相続では、以下のようなトラブルが発生しやすくなります。
- 遺産の分け方をめぐる争い
- 一部の相続人が財産を独占しようとする
- 疎遠な親族が突然相続人として現れる
- 遺言書の内容に納得できない相続人がいる
弁護士が介入することで、公平な立場で遺産分割協議を進め、法的な視点から解決策を提示します。
➡ 「相続トラブルが起こる前に」弁護士に相談することで、円滑な遺産分割を実現し、長期化する相続争いを未然に防ぐことができます。
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③ 遺産分割協議書の作成を正確に行い、将来のリスクを回避
弁護士に依頼することで:
- 相続人全員が納得できる法的に有効な遺産分割協議書を作成
- 金融機関や役所での手続きがスムーズに進む書類を準備
- 後の相続争いを防ぐため、法的な対策を施す
➡ 遺産分割協議書の内容次第では、数年後に相続トラブルが再燃することもあるため、弁護士による正確な作成が重要です。
④ 相続放棄・限定承認など、特別な対応を適切に処理
弁護士に依頼することで:
- 相続放棄の期限(3ヶ月以内)
- 限定承認の手続き代行
- 相続放棄後のトラブルを防止
⑤ 銀行口座の凍結解除・相続手続きのサポート
弁護士に依頼すれば:
- 銀行とのやり取りを代行し、必要書類の準備・提出
- 相続人全員が納得した上で口座の解約手続きを進める
4. まとめ
広域交付制度を活用すれば、相続に必要な戸籍や住民票をスムーズに取得できるため、手続きの時間と手間を削減できます。しかし、広域交付制度だけではカバーしきれない部分もあるため、弁護士に依頼することで、より円滑かつ確実な相続手続きが可能になります。
相続手続きでお困りの方は、弁護士へご相談ください!
適切なサポートを受けることで、相続をスムーズに終わらせ、安心して次のステップに進むことができます。

【弁護士の一言】
今回は広域交付制度と弁護士が関与する相続財産関連資料の収集のメリットについてお話ししました。
相続関連資料の収集は弁護士以外へ収集を依頼することもできます。また、広域交付制度をご紹介したように、弁護士がやらざるを得ない、又は弁護士に依頼するほうがメリットのあるもの以外は、基本的にご自身で収集していただいたほうが良い、というのが弊所の考え方です。
手続を代行するとその分専門家の費用が発生してしまいますから、できる部分はご自身でやっていただいたほうが良いと思います。そのなかで、近年できた広域交付制度を利用すれば、一定の範囲には限られますが、戸籍等を容易に収集できるようになりましたので、少しでも多くの方に知っていただければと思います。
【監修:弁護士 山村 暢彦】