前回のコラムでは、契約書や覚書で特約など記載するときには、「誰が」、「何をする。」を意識して書けば、トラブルになりにくい記載ができる、というお話しをしました。
今回は、少し具体例をみたいと思います。これは、覚書のリーガルチェックのご依頼で、少し手を加えたときの事例です。
【もとの記載】
①乙の敷地もしくは乙の建物の所有者が変更になる場合には、〇〇の使用について甲と協議する。
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【添削後の記載】
②乙土地、又は、乙土地上の建物の所有者が、乙から第三者に変更になる場合には、〇〇の使用について、改めて甲と第三者は協議する。
これは、売買にあたって、隣地の方との設備の使用について取り交わす覚書でした。
もとの記載でも、すぐに問題になるようなものではなかったのですが、添削させていただいたように、覚書や特約を記載する際に、「誰が」、という主語を明示的にすることによって、意味が明確になり、トラブルを減らすことができます。
今回の例のように、甲と乙以外の「3人目の登場人物」がいる場合では、複数人の内、誰の記載なのか主語を明確にする必要性があります。
また、「費用の負担」、「損害賠償責任」・「解除権」など、具体的な責任が生じる条項では、甲と乙の2人しかいなくとも、主語を明確に記載して、責任を明確にしておく必要があります。
契約書・覚書等の作成の際には、今回のように、主語を意識して作成してもらうと、ぐっと良い契約書になります。
【文責 弁護士 山村暢彦】