地震が起きると、様々な方面で多くのトラブルが生じます。今回はその中でも、マンショントラブルについてご紹介します。
マンションの権利関係は、少し複雑である
マンションは戸建てと違って、権利関係が少し複雑になります。
エントランス・エレベーター・バルコニーなどは、共用部分と言います。これらは各区分所有者が、それぞれ持ち分を持っています。
専有部分とはマンションの各部屋のことで、専有部分にはその部屋の持ち主が所有権を有しています。
このような性質上、マンションで自然災害がありトラブルが生じた際は、問題が複雑化することもあります。
地震でマンションの一部が壊れたので、補修したい。どのような手続きがある?
これは壊れた部分によって補修に関する手続きが異なります。
まず専有部分に損傷があっても、それは自分の所有物ですから基本的には自己の責任で補修する必要があります。
共用部分については、損傷の程度で手続きが変わります。
①軽度の損傷であれば、共用部分の管理の一環として、マンション管理組合で集会を開催して、普通決議をすることで補修可能です。
②建物の評価額の2分の1以下の滅失である小規模滅失であれば、こちらも集会で普通決議をすることで補修ができます。
③大規模滅失は、建物の評価額の2分の1以上の損傷となります。こちらは集会で区分所有者と議決権の4分の3以上の賛成が条件となります。
④全部滅失、つまりマンションとしての原型をとどめていない場合は、敷地の共有者全員の同意で解体が可能です。
⑤災害の程度によらず、マンションの建て替えを行う場合は、区分所有権と議決権の5分の4以上の多数決で決めることができます。
マンションが地震で倒壊した場合は、どうすればいい?
例えばマンションが地震等で倒壊した場合は、マンションを建て替えるか、補修で対応するか、解体を選択することになります。しかし、マンションの解体は、マンションの区分所有者全員の同意がなければ行うことができません。この「解体か、補修か」という問題は法定で争われるケースも存在するため、判断次第では大きく人生が変わってしまう人がいるのも実情です。
マンションは共同で不特定多数の人が居住していることから、意図しない判断や自分にとって不利なことが取り決められることも、考えられます。トラブルが深刻化する前に、早期に弁護士へ相談するのが、解決の近道と言えるでしょう。
【弁護士の一言】
一般論として、マンション滅失の場合の用語もご紹介しましたが、よっぽどのことがなければ、小規模滅失に区分される軽微な損害が日常的には多いかと思います。
もっとも、トラブルとして意外と多いのが、「共用部分=管理組合が費用負担して修繕すべき部分」なのか、「専有部分=区分所有者が費用負担して修繕すべき部分」なのか、が判然としないトラブルです。
漏水トラブルで、管理組合の動きが遅く、また保険会社も専有部分の漏水と認定できないと支払ってくれず、漏水被害を受けたオーナーが、板挟み状態になって困っている、という事態を、複数みてきました。
ある程度時間はかかりますが、どうしても状況が動かない場合には、弁護士にご相談ください。建築士などと連携して、原因が専有部分か、共用部分かを判別していく業務を引き受けたこともございます。
【監修:弁護士 山村 暢彦】