不動産賃貸契約では、予想できないトラブルに巻き込まれてしまうことがあります。
そのようなリスクを減らすためにも、不動産賃貸契約における典型的なトラブル事例を知っておくべきと言えるでしょう。
事例:申込み後に契約撤回を申し出た。断られたら、絶対に入居しなければいけない?
Aさんは賃貸アパートを探していたところ、気に入った物件が見つかったため、B不動産会社に連絡を入れて、Aさんは口頭で申込の意思を伝えました。見学をしたことでAさんは他の物件も検討したいと感じたため、申込をキャンセルしたい旨をB不動産会社に伝えました。
しかし、B不動産会社からは、
「契約書にサインしていなくても契約は成立しているため、撤回はできない」と、
言われてしまいました。
このようなケースで、契約撤回は難しいのでしょうか。
~回答~
今回のケースは、申込み後の契約撤回が、可能であると考えられます。
宅建業者には宅建業法にという業者規制の法律により、賃借人への重要事項説明、契約書の記名押印等のプロセスを踏む義務があります。この過程を経ていなければ、賃貸借契約が有効に成立しているとは言えません。
このことからAさんは重要事項説明を受けて、契約書にサインする前であればキャンセルできる可能性が高いと言えるでしょう。
事前に申込金を支払った場合は返してもらうことができる?
では、上記のケースでAさんが申込金を支払っている場合は、B不動産会社より返金してもらうことはできるのでしょうか。
結論としては、可能であると言えます。
そもそも申込金とは、気に入った物件を仮押さえするためや、他の入居申込みに優先してもらうために支払われるお金です。申込金は契約が成立すれば、一部が契約金等に充当されます。但し、契約が成立しなければ、宅建業者はお客様に申込金を返還しなければいけないのです。
不動産業者を規制する宅建業法においては、取引の相手方が申込みの撤回を行った場合は、受領した預り金を返還しなければならない旨が規定されています。(宅建業法47条の2第3項)このため申込金を支払っている場合でも、重要事項説明や入居審査の前であれば契約のキャンセルができる以上、返金にも応じる必要があると言えます。
一般消費者ですと、「解除できない」・「契約しないといけない」と言われても、消費者契約法で守られていますので、専門家に相談すれば解決できる可能性が高いです。
他方、不動産会社からすると、法律を盾に、クレームをつけられないように、消費者契約法を意識して、丁寧に説明するよう心掛ける必要があるといえるでしょう。
【執筆 松本和博 (宅地建物取引士試験合格)】
【監修 弁護士 山村暢彦】