現在日本は、観光客・労働力としての外国流入が増えています。実際に入管法に関する分野でも様々な議論が展開されて、日本のグローバル化は新たな局面を迎えています。そんな中で、外国人が日本に増加した昨今、良いことばかりだけではなく、トラブルも増加傾向です。
外国人が日本に住む場合は、賃貸で暮らす人や不動産を購入する人など、多様です。不動産における契約手続きについて、どのように対応すればいいのかを検討しておく必要があるでしょう。
外国人に不動産を貸すことが、当たり前になる時代が来る?
今後アジアを中心とした、多くの外国人に不動産を賃貸したり売買する日が、当たり前になるかもしれません。しかし、各国で不動産に関する文化や契約に関する文化が、まるで異なります。その差異が引き金となり、不動産トラブルに発展する場合があるかもしれません。
契約書に関すること
不動産の契約では、重要事項説明を宅地建物取引士が行い、契約書を発行します。しかし、これらの説明時に契約内容の意思疎通が正確に取れているかは、判断が非常に難しいと言えます。
公益財団法人不動産流通推進センターの見解では、原則としては、契約の書式や契約の説明は日本語でなければならないとしています。
「外国人が日本国内において不動産の売買契約を締結する場合、その売買契約に適用される法律は日本国の法律である(法例第7条〜第10条)。したがって、売買契約書の作成や重要事項説明書の作成といった業法上の規制についても日本国の法律である宅地建物取引業法が適用されるので、当然それらの書面の様式や内容は日本語で書かれたものが原則とならざるを得ない。」
引用:公益財団法人不動産流通推進センター
https://www.retpc.jp/archives/1540/
しかし、日本語で書かれた契約書の意味が、お客様である外国人に伝わっていないのであれば、民法176条に照らして、契約が有効に成立していないことになります。
そのため、相手の母国語に翻訳した契約書を添付して、その国の言語で説明することが必要であると判断しているようです。
通訳を通して契約をする場合は?
このように外国人との不動産契約では多言語での対応が必須となります。では、通訳がいるケースは、どのように取り扱われるのでしょうか?
通訳がいる場合は、後日の紛争を予防するうえでも、通訳者として、売買契約書や重要事項説明書にサインをしてもらうなどの対応を取ることになります。そして、この時にお客様である外国人側から、契約や重要事項説明について通訳させる旨の「委任状」も取得しておく必要があるでしょう。
不動産業界においても、外国人向けの契約手続きに関する実務が浸透していけば、トラブルを減らすことが期待できます。
【監修:弁護士 山村 暢彦】