不動産売買は、どうすれば成立するの?
不動産の購入は高額な取引になることが多く、そのため売買の際にはトラブルに発展するケースもあります。不動産の購入を不動産会社に申し込みすると、「重要事項説明」という物件に関する情報や、取引に関する重要事項の説明を受けます。
そして、十分に説明に納得した場合に、売買契約を締結します。しかし、このプロセスにトラブルのポイントがあります。
実際の趣旨は、契約締結前に物件を本当に購入するか判断するための重要事項説明なのです。通常は重要事項説明を受ける段階で、口頭で不動産会社に「この物件を購入したい」と申込みしていることが想定されます。
不動産売買トラブルのモデルケース
マイホーム購入のため、中古戸建住宅を検討しているAさん。不動産業者の担当者には口頭で「この家を購入します。」と何度も伝えていました。その後Aさんは内覧や現況確認を進め、購入を決定、契約手続に進むことになりました。しかし、契約段階の契約書への署名捺印をする前に、どうしても納得がいかない点があり、物件購入についてキャンセルしたいと、不動産会社に伝えました。
しかし、不動産会社の担当者より次のように言われて、Aさんは困ります。
「契約は、本来口頭の意思表示だけで成立しています。契約書はその内容確認でしかないため、キャンセルする場合は契約書記載の違約金が発生します。」
今回のケース、Aさんは本当に違約金を支払う必要があるのでしょうか?
そもそも、不動産売買の「重要事項説明」とは?
不動産取引が成立すると、不動産業者は顧客に重要事項説明を行う法律上の義務を負っています。物件情報(登記事項、法令上の制限、私道負担、インフラ状況)、取引条件(支払い、契約解除、手付金、契約不適合責任)、その他の事項について書かれています。
不動産売買契約書とは?
不動産売買契約書とは、不動産購入の際の取引内容に関する契約書です。不動産取引は高額な取引となることが多く、書面により契約書を締結するのが一般的です。不動産会社であれば宅建業法という業者規制の法律によって、契約が成立したら、契約内容を記載した書面を宅地建物取引士の記名押印の上で、遅滞なく交付することを義務づけています。
不動産売買契約書に署名捺印しなければ、契約は成立しない?
前述でも繰り返していますが、不動産は高額で重大な財産であり、高額取引である不動産を売却する際に、書面での契約プロセスなしで契約成立というのは、認められる可能性はかなり低いと言えます。
これが認められれば、Aさんは契約を問題なくキャンセルすることもできるでしょう。
【弁護士の一言】
「契約は口頭で成立する」というのが、法律の原則なのですが、不動産売買契約に至っては、売買契約書、重要事項説明書に署名捺印するまでは、キャンセル可能です。「買付証明書」などという書類を事前に提出することがありますが、裁判例では「買付証明書」だけで売買契約があったと認定するものは、基本的にありません。
記事のような「口頭で言ったから、売買契約成立」というのは、かなり悪質な説明ですので、専門家に早急に相談するべきでしょう。
【監修:代表弁護士 山村 暢彦】