両親が亡くなり、相続が発生した場合、可能な限り争うことなく、スムーズに遺産分割を済ませたいと考えます。
「うちは兄妹仲が良いから」と、このように考えていても、いざ相続が始まると争いやトラブルに発展することも珍
しくありません。
今回は相続における遺産分割でも、問題になりやすい不動産のトラブルについてご紹介します。
相続不動産を平等に分けるは難しい?
相続財産が現金だけというケースはほとんどなく、不動産もセットで残っていることがあります。現金や有価証券
等、分割可能で流動性が高い財産であれば、自由度の高い分割が可能でスムーズに遺産分割が終わることが多いで
す。
しかし、両親の持ち家が残っている場合は、そういうわけにはいきません。不動産を半分に切って分けるわけにも
いかないですから、何かしらの方法を考えて分割する必要があります。
兄妹が二人いて、現金と両親が住んでいた一戸建てが残っていたとします。
もし両親が住んでいた家に未練がないのであれば、売却して現金に換えて、その金額を話し合って分けるのがベス
トです。しかし、どちらかが、不動産を相続せざるを得ないこともあります。
そのような場合、不動産の価格評価が問題となります。不動産は一物四価と言われており、路線価、固定資産税評
価額、公示価格、実勢価格など評価基準が異なります。
この不動産の評価方法で折り合いがつかず、争いに発展するケース、売りたくもないが、もらいたくもないという
ことで、残された家族で相続争いになるケースが存在するのです。
通常、両親が亡くなる年齢では、子供も独立して自分のマイホームをそれぞれが所有していることが多いです。そ
のような場合、不動産を相続しても住む家は1つあれば十分ですから、不動産は引き取りたくないと考える人が、少
なからずいます。
土地をもらえると、思い込んでしまっていませんか?
人によっては医療費や生活費で預金が無く、不動産しか財産がないというケースもあります。このような場合も、
争いに発展する可能性が内在しています。
例えば、相続財産が不動産のみで、兄妹の一方が親と同居していた場合、両親が亡くなったあと、その住んでいる
居宅について相続争いが生じることがあるのです。
面倒をみたのは自分なのに、兄妹で争続に!?
母・兄・妹の家族で、実例を考えてみましょう。
①高齢で介護が必要な母親を、妹が同居して、献身的に介護していた。
母親は、生活費や医療費等で現金を使い、不動産(一戸建て、母親名義)以外の財産は残されていない。
②母親が死亡後、同居の妹に兄が不動産を売却して、現金化して、2分の1ずつ分けたいと要求。
兄は婚姻しており、自分名義のマイホームを所有。子ども進学費用に一部そのお金を工面したいと考えている。
③しかし、妹は「自分は母親を介護しており、この家をもらう権利がある」と主張。
母親と同居していた居宅に住み続けるつもりであり、兄の不動産を売却したいという考えと、対立している。
このようなケースでは、遺言書等もなければ、兄妹上の立場やそれぞれの生活状況が大きく異なるため、遺産分割に
おいて争いとなる可能性が高いと言えるでしょう。
もし、不動産しか相続財産が残っていない場合、相続について早めに話し合いをしておく方が、得策と言えます。
【執筆 松本和博 (宅地建物取引士試験合格)】
【監修 弁護士 山村暢彦】