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裁判例ノック76~82本目 自力救済

弊所 弁護士・寺田の裁判例ノックですっ‼
皆さまに役立つ過去の裁判例を、ご紹介していきますっ‼

裁判例ノック 76本目

姫路簡裁 H21.12.22
【概要】
管理会社が賃借人を締め出した行為について、管理会社はもとより、賃貸人の使用者責任も認めた事例です。
委任事務の内容にもよるところですが、自力救済を行った側は、やはり厳しい判断が下っています。

【結論】
「荷物はすべて出しました」と張り紙をし、自宅の立入りを不可能にする行為を不法行為と認定。
賃貸人と管理会社は委任契約において、賃料の取立てを委任しており、指揮命令の関係が残されているとして使用者責任を認定。未払賃料や撤去費用等を考慮し、請求一部認容となった。

賃料取立ての委任によって、賃貸人も責任を負うことになったというものです。
賃貸人側からすれば腹が立つところでしょうが、家に入れなくなった賃借人、ということで損害が認定しやすいところもあるように読めます。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック 77本目

大阪簡裁 H21.5.22
【概要】
賃貸人が、賃料不払いを理由に鍵を交換し、賃借人を締め出したという事例で、賃借人が不法行為に基づく損害賠償をしたものです。
事案としてはシンプルですが、鍵交換による「追い出し屋」の責任を初めて認めた裁判例になります。

【結論】
鍵を交換した行為は、通常行える権利行使の範囲を超えており、自力救済として許容されるものではないため違法行為となる。
保証人についても、賃貸人からの催促電話にやむなく応じたものであり、積極的に働きかけたものではない。そのうえで、使用できなかった分の損害を認定。

事案としてはシンプルです。リーディング・ケースとして、自力救済が認められないという判断がされたことが大きいものです。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック 78本目

大阪地判 H19.3.30
【概要】
賃貸人がクーラー修理のために貸室に立ち入る行為は、賃借人に対する債務不履行になるが、解除事由にはならないとされた事例です。
敷引特約もあり、てんこ盛りの裁判例となっています。

【結論】
承諾のない立入りは、プライバシーを害するものとして債務不履行・不法行為に当たることを認定。
もっとも、賃貸人の修繕義務を根拠に、解除までは認めず、損害額を認定。敷引特約について、5万円は認められたが、25万円は認められず、一部のみの認定となった。

修繕義務とプライバシーとの兼ね合いを取った裁判例だといえます。
事前に電話で合意を取った日もあったみたいで、なぜ全日許可を取らなかったのか気になります。
丁寧な対応が必要ですね。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック 79本目

東京地判 H18.5.30
【概要】
「1か月滞納で解除」、「自力救済を認める」内容の特約があり、それに基づいて鍵を付けたパターンです。
特約を結びたがりますが、同意をしていてもダメな例も、多々あります。

【結論】
扉の施錠は、占有を完全に排除したとはいえないが、住居への立ち入りを困難にするものであり賃借人の住居の平穏が害された。
本件特約は、賃料の履行や建物退去を間接的に強制する趣旨であり無効である。立入りが適法となる特別な事情はなく、賃貸人の請求は一部認められた。

様々な賃貸借のリスクを軽減するため、特約にて貸主の自力救済を認める条項を設ける事例はよくあります。
リスク管理として考え方は適当ですが、立入り等の自力救済は認められにくいです。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック 80本目

東京地判 H16.6.2
【概要】
自力救済として鍵を交換した行為につき、損害がないとして賃借人の請求が棄却された裁判例です。
賃貸人側が勝った事例ではありますが、不法行為自体は認定されており、特殊な事例ではあります。

【結論】
鍵交換行為は、事前の通知があったものの、賃借人の占有を侵害するもので不法行為に該当する。もっとも、資金繰りが悪化し、逮捕の報道で社会的信用も低下していたため、業務遂行がなされていたといえず、損害は認定できない。

単に賃料不払いがあったのみだけでなく、夫の逮捕やそれに伴う報道等の影響もあった特殊な事例です。
損害がないことと、行為が不法行為と認定されるかどうかは、別なことにも留意しましょう。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック 81本目

札幌地判 H11.12.24
【概要】
賃貸借契約書の自力救済条項に基づき、居室内に侵入し鍵を取り換えたことが違法と判断された例です。
賃貸人なりに色々と理由を考えて行ったようですが、それでも認められない、といった内容です。

【結論】
本件の特約は、賃料支払いの履行の強制を目的とするものであり、自力救済として認められず、無効と認定。居室内に立ち入り、水を抜く等の行為は、水道管破裂の危険性があったと主張するが、賃借人に連絡を取ることもでき、賃料不払いの事情も知っていたことからすれば、必要な行為といえない。

何度も書面を送り、不在がちな賃借人なので水道管破裂のおそれがあり、と、賃貸人なりに理屈を考えていることはわかります。
とはいえ、自力救済は認められません…。
何度も言うようですが、専門家に頼むのが、一番の解決策となります。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック 82本目

東京地判S62.3.13
【概要】
古めの裁判例ですが、賃貸人の自力救済が違法でないとされた事例です。
本当にやむを得ない場合…、ということがわかる事例です。

【結論】
張り紙は、貸室におらず、自宅電話も不通のため、やむを得ずにやったとされ、鍵の交換も業務妨害のためでなく防災・防犯の必要上やむを得ないものと認定された。
物品の搬出・保管についても、放置しており、連絡に反応せず、移動にも配慮があったとして違法といえず、不法行為はないと認定。

本件は、賃借人があまりにルーズで、賃貸人が困ったうえにやったという認定です。
防災・防犯上やむを得ないというのも、まさにやむを得ないというところですね。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

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