家族の死亡後、思いもよらない遺言書の内容に直面することは、遺族にとって非常に衝撃的で、精神的な負担となります。
特に遺産が家族以外の第三者に全て相続されるような場合、相続人にとっては自身の権利が侵害されていると感じることも多いでしょう。
本稿では、そのような状況における遺留分侵害額請求の手続きについて、より専門的な視点から横浜の弁護士が解説します。
裁判所のホームページに手続資料が掲載されていますので参考までに。
◆遺留分とは
遺留分とは、民法に基づいて法定相続人に保障されている、遺産の一定割合の相続権のことです。
この制度の目的は、被相続人が遺言によって相続人の利益を著しく損なうことを防ぐためのセーフティネットとして機能することです。
遺留分を持つ相続人は、配偶者、子供、直系尊属に限定され、兄弟姉妹には認められていません。
遺留分の割合は、被相続人が残した遺産のうち、相続人の立場に応じて異なり、具体的には配偶者や子供がいる場合は遺産全体の1/2が遺留分として保障されます。
◆遺留分侵害額請求の申立方法
遺留分侵害が生じたと考えられる場合、相続人は「遺留分侵害額請求」を行うことができます。
この請求は、侵害された遺留分の回復を求めるための法的手段であり、以下の手順を踏むことが求められます。
◆遺留分の計算
最初に、自身の遺留分がどの程度かを明確に計算します。
遺留分の計算には、相続財産の全体的な評価と、各相続人の法定相続割合を考慮する必要があります。
この計算過程には、不動産の評価や相続債務の控除など、専門的な知識が求められるため、適切な助言を受けることが望ましいです。
法定相続分などについてはこちらの記事にまとめてますので良ければご参照ください。
◆遺留分侵害額請求の通知
遺留分侵害が認められる場合、遺産を受け取った第三者に対して、遺留分侵害額の請求を行います。
この請求は、通常、内容証明郵便を用いて正式に通知する形で行われます。
内容証明郵便を利用することで、請求の事実を法的に証明することができ、後の調停や訴訟において重要な証拠となります。
◆交渉と合意
通知後、相手方と直接交渉を行い、可能であれば合意に至ることで解決を目指します。
交渉の過程では、双方の利益を考慮し、合理的な譲歩が求められることが多いです。
しかし、感情的な対立や複雑な利害関係が絡む場合、交渉が難航するケースも少なくありません。
◆家庭裁判所への申立て
交渉で合意に至らなかった場合、家庭裁判所に対して調停を申し立てることになるかと思います。
調停は、裁判官と調停委員による中立的な立場からの調整を通じて、双方の妥協点を見つけるための手続きです。
調停が不成立に終わった場合は、訴訟に移行し、最終的には裁判所の判断によって遺留分侵害額の支払い義務が確定されることになります。
◆専門家のサポートを受けることの重要性
遺留分侵害額請求には、相続法に関する深い知識と精緻な手続きが求められるため、弁護士のサポートを受けることをお勧めします。
遺産相続は感情的な対立を伴うことが多く、そのため、第三者である弁護士が間に入ることで、冷静かつ客観的に問題を処理することが可能となります。
弁護士は、法律的な観点からクライアントの最善の利益を守る戦略を立案し、無用な対立を回避しながら、迅速に問題を解決するための適切な道筋を提供します。
特に、遺留分侵害額請求は交渉や調停、訴訟といった段階を含むため、その過程における法的手続きに不慣れな相続人にとって、専門家の支援を得ることで精神的な負担を大幅に軽減することができます。
弁護士が代理人として対応することで、交渉相手との直接のやり取りを避けることができ、相続に関するストレスを最小限に抑えながら、法的に有利な立場を確保することが可能です。
◆お困りの方はご相談ください
もし、予期せぬ遺言書の内容に困惑し、遺留分が侵害されていると感じている場合は、まずは専門家に相談することを強くお勧めします。
当事務所では、遺留分侵害額請求に関する具体的な助言や手続きをサポートいたします。
【弁護士の一言】
遺留分侵害額請求は、「遺留分が侵害された事実を知った時から1年」という期間制限がある権利なので、「相続の発生の日から1年以内に、遺留分侵害額請求権を行使します、という内容の内容証明郵便を送る」というのが基本的なファーストアクションとなります。
「侵害を知ったかどうか」で争いが起きると厄介なので、極力、相続発生日(=被相続人死亡日)から1年以内に行う。「送ったかどうか」で争いが起きると厄介なので、「内容証明郵便の配達証明付郵便」で送付するというのが基本です。
ただ、この遺留分侵害額請求権を行使しますという通知の時点では具体的な金額の算定が終わってなくともよいので、遺留分を請求する気があるなら、早めにやってしまったほうが良い作業になると言えるでしょう。
もし遺留分についてお困り事がありましたら下記、問い合わせフォームよりご連絡ください。