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裁判例ノック69~75本目 自力救済

弊所 弁護士・寺田の裁判例ノックですっ‼
皆さまに役立つ過去の裁判例を、ご紹介していきますっ‼

裁判例ノック 69本目

東京地判 H30.3.22
【概要】
賃料滞納がされていたところ、賃貸人が貸室を封鎖し、賃借人の家財道具を撤去・処分した事例。
自力救済が不法行為にあたると認定されたものです。

【結論】
賃貸人が撤去行為を行ったか否かについて、証拠上認められるかという争点につき認定、そのうえで、カバーの設置行為や家財道具の撤去・処分行為が不法行為に当たることが認定。
合意書によっても違法性が阻却されることはなく、賃借人の損害賠償請求が認められた。

賃料不払いが明らかであっても、自力救済は原則禁止という、わかりやすい裁判例です。
原則自力救済を行ってはダメで、弁護士等に依頼するということは基本となります。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック 70本目

東京地判 H26.11.27
【概要】
自力救済が認められたパターンですが、相当珍しい事例ともいえます。
賃借人と数か月連絡が付かず、警察立会いの下開錠すると知らない男が出入りしており、不正なカギのコピーがなされた形跡あり、という少し怖い事例ですね。

【結論】
本件は、違法行為の可能性があると判断した警察官の指示による鍵交換で、違法な自力救済ではない。保証契約についても、立入りに異議を述べず信頼関係の破壊はなく、契約において、不可抗力による使用収益不能もないと判断。
保証契約に基づき、保証債務を支払う義務があると認定した。

保証会社からすれば不運でした。
一方で、管理会社と貸主は、自分たちだけではなく、警察に立ち合いを求め、事前に保証会社に伝え、警察の指示に従うというリスクマネジメントがうまい事案でもあります。
特殊な事例ですが、学ぶ部分も大きいですね!

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック 71本目

大阪地判 H25.10.17
【概要】
賃料滞納を理由に、買主や保証会社が借主に対して、追い出し行為を行ったところ、借主が不法行為により損害賠償をしたというものです。
やはり、「自力救済はやってはダメ!」という結論になってしまいます。

【結論】
貸主らによる追い出し行為が加害行為に当たることを認定し、それらの違法性が阻却されることもない。
貸主らの行為に正当性がないため、過失相殺等も認められず、借主の請求内容の一部につき認容されたというもの。

1か月程度の滞納で、かなり語気強く詰め寄ったものであるため、貸主側もやりすぎな部分は多くありました。
真っ当にやっても認められないのが自力救済ですので、弁護士等に頼むのが、やはり一番です。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック 72本目

東京地判 H24.9.7
【概要】
保証会社が、賃貸物件に立ち入り賃借人の物品を処分した事例で、会社の不法行為責任と代表者の個人責任が認められた事例です。
賃借人もなかなかヒドいやつではあるんですが、それでもやはり自力救済はダメ、という内容です。

【結論】
保証会社は、貸室からの退去等を求める立場になく、そもそも自力救済にすら当たらないと判断。
損害額について、賃借人の不誠実な対応も考慮されたものの、請求は一部認容され、会社の責任だけではなく、代表者の任務懈怠責任も認定された。

保証会社として、このような行動を起こしたくなるような事案ではありました。しかし、自力救済にすら当たらず、損害賠償責任を認定されたものです。
まずは専門家に相談、というスタンスを崩してはいけません。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック 73本目

東京地判 H24.3.9
【概要】
管理会社が、賃料を滞納した賃借人に対して退去を迫り、家財を処分した行為が不法行為に当たるとされた裁判例。
賃料滞納のため、気持ちはわかりますが、明らかに管理会社がやりすぎた事例です。

【結論】
本件が物件からの退去の強制であることを認定し、法的手続きによることのない退去は違法行為に当たり、確認書に署名・押印していることも同様に強制である。また、家財の処分は財産権を侵害するものであって違法行為に当たると認定。
これらにより、不法行為が成立すると判断した。

長期間の滞納があったり、賃借人にも責められるべきところはありましたが、やりすぎの一言です。
強制退去を迫るのではなく、法的手続きに乗せることが大事です。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック 74本目

東京地判 H23.2.21
【概要】
保証人が無理やり賃借人の家財道具を処分したことにつき、保証人の責任を認め、鍵を渡した管理会社の責任を認めなかった事例。
本事例そのものは保証人のやりすぎ、で終わりますが、難しい課題も残る事例と言えます。

【結論】
賃借人の意思に反した強制退去行為が不法行為を構成することは明らかで、その際の暴行は過剰防衛に当たるため、違法性が阻却されることもない。
一方、鍵を渡した保証会社は、建物明渡義務を負う保証人の任意の明渡を期待し、直接賃借人に確認する義務はないとして責任を否定された。

本件とは異なり、賃借人が行方不明になってしまい、保証人が賃料を支払わざるを得ないといった場合に、どうすべきか、となると保証人ができることは難しい問題になります。
やりすぎがよくないのは明白ですが…。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

裁判例ノック 75本目

東京地判 H22.10.15
【概要】
賃借人不在時に、管理会社が貸室の鍵を交換し家財等を処分した行為が違法と判断されたものです。
多少強引なところもあった管理会社ですが、かなり厳しい結果になっている印象です。

【結論】
本件契約書には、1か月以上不在になると当然解除され、残置物等処分される旨の条項があった。
しかし、自力救済禁止の趣旨から、同条項が当然有効となるものではなく、異臭や虫等を裏付ける証拠もないため不法行為となる。また、念書は、公序良俗に反し無効とも判断。

裁判例を読むと、しっかり証拠による裏付けがされておらず、管理会社の主張が認められなかったとも読めます。
借主長期不在は、貸主としても頭が痛いところですが、安易な自力救済はやってはダメ!ですね。

【文責:弁護士 寺田 健郎】

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