弊所 弁護士・寺田の裁判例ノックですっ‼
皆さまに役立つ過去の裁判例を、ご紹介していきますっ‼
裁判例ノック21本目 原状回復
神戸簡裁H15.4.10
【概要】
敷金精算は管理会社に一任とするとされていた主張は認められず、敷金から控除されないとの事案。
賃貸人の主張不足は否めません…。
【結論】
日割の賃料等については、支払っていないことが明白である。しかし、それ以外の点は、費用項目や金額について具体的な主張がないため、敷金から控除すべき費用はないものとせざるを得ない。
裁判所の言いぶりからしても、具体的な主張がされていれば、どうなんだ…?という疑問はあります。
管理会社や仲介会社等、借主貸主以外の多くの会社が絡む不動産賃貸ですので、適切なスキームでリスク管理をする必要がありますね。
【文責:寺田 健郎】
裁判例ノック22本目 原状回復
大津地裁H16.2.24
【概要】
設備使用料・設備協力金の合意や、通常損耗の特約がすべて無効とされ、賃借人の主張が全額認容されたもの。
敷金返還請求訴訟で全額認容というのは珍しく、賃貸人は、やり過ぎたパターンといえるでしょう。
【結論】
修繕費については、
①必要性・合理的理由があること、②賃借人が認識していること、③義務負担の意思表示をしていることの要件充足性がないとして認めなかった。
設備費の合意については、徴収額が公庫が指導する額の倍以上であり、社会的に認容しがたいとして、全体を無効と判断した。
敷金3か月分と設備費(名目は冷暖房使用の対価)を15万円というのは、賃借人とのバランスからして、やり過ぎのように感じます。
更新料1カ月であればまた結論は変わったのでしょうが…。
いつも「バランス」といっていますが、具体的な取り方は難しいところがありますね。
【文責:弁護士 寺田 健郎】
裁判例ノック23本目 原状回復
牧方簡裁H17.10.14
【概要】
賃貸人がやり過ぎたパターンといえるでしょう。
保証金(敷金)を賃料4カ月分の25万円交付を受け、その全額を敷引特約にするとの記載が無効とされたものです。
【結論】
本件敷引特約は、信義則に反するものであり、消費者契約法10条の要件を満たす無効なものである。また、カビについては、賃借人はできる限りの対策を取っており過失はなく、建物構造上の問題のため賃貸人の債務不履行となる。そのため、賃借人の請求が認容された。
差し入れられる金銭の性質をも考慮すべきといえます。実質礼金のような本件保証金でありますし、礼金という名目であれば結論がどうなったかというのも気になります。
敷金名目で、始めから何も返さないというのは、やり過ぎの気があります。
【文責:弁護士 寺田 健郎】
裁判例ノック24本目 原状回復
最二判H17.12.16
【概要】
通常損耗を賃借人が負担する旨の特約の有効性に関する最高裁判例です。
内容は、これまでの裁判例と変わらないものでありますが、やはり最高裁判決というと重さがあります。
【結論】
賃貸借において、自然劣化や通常損耗に係る減価の回収は通常賃料の中に含ませて支払いを受けることで行われている。賃借人にその義務を負わせるには、特別の負担を課すもので、通常損耗の範囲が契約条項で具体的に明記されているか、口頭で明確な合意がされていることが必要と判断した。
通常損耗は、しっかりと範囲を定めて合意するか、賃料のなかで予め計算して取っておくか、ということが必要であるという内容ですね。
その他の名目で金銭を差し入れてもらうにしても、やはり全体のバランスを逸していると、紛争になった際には厳しい印象です。
【文責:弁護士 寺田 健郎】
裁判例ノック25本目 原状回復
西宮簡裁H19.2.6
【概要】
個人相手に賃貸した物件で敷引特約を締結したものが、消費者契約法10条により無効とされた事例。
家賃13.5万円、敷金80万円、敷引特約50万円で、賃貸人やり過ぎた事例だといえるでしょう。
【結論】
賃貸人は、本業副業を問わず法人であるために「事業者」であり、賃借人は「消費者」であるため、消費者契約法の適用がある。そのうえで、敷引金は、敷金の62.5%、賃料の3.7倍、事由を問わない点で賃借人に一方的に不利であって、消費者契約法に反し無効であると判断した。
具体的に限界となるラインがどこか明示はされませんでしたが、個人相手に大幅な敷引特約を結ぶと、無効とされる余地があるといえるでしょう。
返還を求めないのであれば、礼金等の名目で、しっかりと合意を取る必要があるといえるでしょう。
【文責:弁護士 寺田 健郎】